本日は7月16日(なな・いろ)で虹の日だそうです。※サムネはウィキペディアより参照しました。
BUMPのなないろについては以前に書きましたので、今回は別の虹の曲を解釈していこうと思います。
今回、歌詞を考えていくのは「月虹(げっこう)」です。
まず、月虹とは
月明かりに空気中の水分が照らされ、乱反射し虹が見える現象のこと。(昼間に見える虹と原理は同じ)
要は夜中に見える珍しい虹のことです。
そして、この曲は「話がしたいよ」が出来た後に作られた歌詞だということ。
話がしたいよは楽曲作成に追われて、疲れ果てた末に藤原さんがベンチに座った時の事を書いた一曲です。
この疲れ果て座った時の曲は「話がしたいよ」、そこから立ち上がる際に書かれた曲が「月虹」と藤原さんの過去のインタビューから知ることが出来ます。
極限の精神・体の状態から生まれたこの曲はどう「月虹」というワードと絡み合ってくるのでしょうか。
考察をしていこうと思います。
歌詞解釈 今は明けるのか、明ける前か
夜明けよりも手前側 星空のインクの中
落として見失って 探しもの
心は眠れないまま 太陽の下 夜の中
つぎはぎの願いを 灯りにして
夜明けより手前側
この表現だけでは明けようとしているのか、真っ暗闇のままなのか確かではありません。
そんな不安な印象を思わせる一文です。
空には無数で様々な輝きを持つ星が光っています。
「星空のインクの中」のイメージが湧きづらいと思うので
この曲は漫画原作のアニメ、「からくりサーカス」の主題歌として書かれたものでもあるので、漫画→インクのような連想も入れてあるのだと思います。
満天の星空が詰まったインクの瓶をイメージし、そんな中に自分で描こうとしたペンからインクをぽとりと落としてしまえば、あっという間に見失ってしまいます。
そんな不安定な気持ちや人生を歩む途中の不安を冒頭では書いているのだと思います。
人それぞれ不安や苦しみは違うと思いますが、その中でも自分は生きています。
心から安らかに眠れないまま、頑張って毎日起きて生活をしているでしょう、太陽に照らされても心は光を見つけられずに。
何かしらの生きる意味を探しながら、生きてしまっているのです。
一瞬を掴むための空っぽ
何も要らない だってもう何も持てない
あまりにこの空っぽが 大きすぎるから
この曲の主人公は人生の途中。
不安や苦しみの大きさは分かりませんが、おそらくまだ何も成し遂げていない、納得のいく道を歩めていないのだと思います。
空っぽ=満たされていない
という表現とも取れますよね。
確かに自分の人生を歩んできた、でも、満たされていない状態がどんどん膨らんできて、押しつぶされそうな気持ちがここの歌詞では伝わってきます。
たった一度だけでも頷いて欲しい
鏡の様に手を伸ばして欲しい
その一瞬の 一回のため それ以外の
時間の全部が 燃えて生きるよ
長い人生の中で喜びを感じる瞬間ってどれくらいあるのでしょう?
努力せずに運良く夢を叶えられた人はいるとは思いますが、世の中に現れた優れた人や天才と呼ばれた人たちが名声を浴びた大半の出来事はおそらく長い人生の中の小さなたった1つの出来事なのだと思います。
1時間1分1秒、努力や積み重ね、痛みを繰り返し、挫けても立ち上がった末に起きた一瞬のことがその人を輝かせるきっかけになったのです。
逆を言えば、その一瞬を掴むために自分の空っぽはあるだと思います。
もやもやした無駄に感じる様な1日でもあなたを作る1秒の空っぽが今ここにあるのです。
僕の正しさなんか僕だけのもの
どんな歩き方だって会いに行くよ
胸の奥で際限なく育ち続ける
理由ひとつだけ抱えて
いつだって 舞台の上
環境や周りの人がなんと言おうとそれを受け入れるのは自分次第です。
逆境を受け入れるのも跳ね除けるのもあなた次第だし、全て自分が選んだものです、文句は自分にしか言えません。
そして、夢や希望、追い求める目標を捨てるのも持ち続けるのも自由。
しかし、それを捨てようと拾おうとあなたが生きるという事は変わりありません。
あなたが「自分らしく生きる」という理由を抱えた舞台は何ひとつ意味は変わらないのです。
理由の分からない痛みを繰り返す意味
思い出になれない過去 永久リピート 頭ん中
未だ忘れられない 忘れ物
謎々解らないまま 行かなくちゃ 夜の中
今出来た足跡に 指切りして
人生を歩む中で何かを成し遂げたぞ!!、と胸を張って言える人は今までに何人いたのでしょうか?
自分の夢や目標に気づいて生きていけていた人たちは今までどれくらいいたのでしょうか?
挫折や苦しみを繰り返し、倒れていった人の方が何倍も多いように感じます。
そんな苦しみが何かに繋がっているのか解らない謎の痛み、人生というものは無慈悲に進んでいきます。
傷付いた分だけ、前に進んだという約束の様なもの、そこで今ちゃんと生きていたいう証を残して。
同じ様な生き物ばかりなのに
どうしてなんだろう わざわざ生まれたのは
自分が生まれた意味、あなたがそこにいる意味。
自分らしい自分と出会うためにはどうすれば良いのか、そういった疑問をここでは分かりやすい哲学のような言葉で問いかけしています。
涙は痛みを繋ぐ音、その先に見えるもの
世界が時計以外の音を失くしたよ
行方不明のハートが叫び続けるよ
あっただけの命が震えていた
あなたひとりの 呼吸のせいで
時計以外の音を失くした
ただ何も出来ず、時間だけが進むこと表していると思います。
自分の心の中ではどうしようもない痛みや苦しみだけが膨れ上がり、震えて生きている自分がいます。
この世に生を受けてしまったからにはどうにかして生き続けていくしかないのです。
いつかその痛みが答えと出会えたら
落ちた涙の帰る家を見つけたら
宇宙ごと抱きしめて眠れるんだ
覚えているでしょう
ここに導いた メロディーを
ここの歌詞はBUMPの楽曲「涙のふるさと」が浮かびます。
涙のふるさとの歌詞では心に負った傷と主人公を向き合わせるために涙が会いに来てくれます。
「会いに来たよ 君に会いに来たんだよ」
涙が流れてもこの言葉は聞こえるものではありませんが、涙の存在そのものが傷付いた自分と震えている自分を近づけてくれる確かなメッセージとして感じることはできます。
傷が生まれた理由と向き合えたら、その痛みが指す答えへたどり着くことが出来たら、ありのままの自分を受け入れることが出来たら、宇宙=星空にインクを落としてしまって苦しんでいた自分、を受け入れて眠ることができる。
会いに来たよと言ってくれる涙がメロディーとなって嫌いな自分と向き合う場所へ導いてくれるのです。
流す涙はあなたに理由を与える
耳と目が記憶を 掴めなくなっても
生きるこの体が 教えてくれる
新しい傷跡に 手を当てるそのたびに
鮮やかに蘇る 懐かしい温もりを
聞いたり見たりすることをしたくなくなっても、心の奥底から教えてくれる。
涙を流す度に傷が増えた意味を教えてくれるのです。
傷は懸命に生きようとする人にしか増えません。
夢や目標を追いかけたり、他人を気遣ったり、自分の嫌いなところを見ようとしたり、頑張って進もうとする人にだけ傷は増えるのです。
苦しかった思いや大変なだった記憶はあなたを強くしてくれる大切な力なのです。
痛みから生まれた涙は虹を生む
世界が笑ったように 輝いたんだよ
透明だったハートが形に気づいたよ
どこに行ったって どこにも行かなかった
あなたひとりとの 呼吸のせいで
たった一度だけでも頷いて欲しい
どんな歩き方だって会いに行くよ
あっただけの命が震えていた
理由ひとつだけ 虹を見たから
いつだって 舞台の上
嫌いな自分も引っくるめて自分、あなたを救ってあげられるのは結局は自分自身の行動です。
ここでは、あなたひとり「との」、呼吸のせいで、と変わっています。
あなたのハートを満たすものも、世界を輝かす理由を見つけるのも他の誰でもない自分自身ということを強調している様に思えます。
最初は怯えながら震えていましたが、ここではそれに気づいた主人公は武者震いのように期待に溢れた心の震えを感じ取れます。
虹とはBUMPの楽曲では夢や目標として捉えることが多くあります。
傷を負い、流した涙は暗闇の中の月に照らされ、虹となるのです。
痛みの先には必ずや目標や理由がある。
痛みは決して無駄ではないと伝えてくれている曲なのではないかと僕は思っています。
最後に:痛みがあるのはあなたがいる理由
苦しみや痛みはあなた自身を作ってきた大切な事柄です。
同じ様な見た目をしていても、経験してきたことは全く違うし、誰一人同じ人はいません。
あなたにしか出来ない、あなたにしか感じることの出来ない事があるから、違う生き物であるからこそ人間は輝くのです。
月虹は夜に見える虹
暗闇の中で必死に歩き続けるあなたの背中を押してくれるBUMPらしい曲だと改めて思います。
ではまた!
イノ